溶剤系インクジェット用糊付き塩ビシートの使用上の注意

 

 溶剤系インクジェットプリンタで直接糊付き塩ビシートにプリントできることはコスト的にも非常にメリットのあることですが、まだ新しい技術であり、いくつかの注意点や技術的限界があるのでこれらを良くご理解いただいたうえで、正しい用法でご使用ください。

 

1)        インク、プリンタの特性にあった塩ビシートを選びましょう。 溶剤のタイプによって使えるものと使えないものがあります。 あるいはプリンタの設定やRIPの設定を変更する必要があります。

2)        プリント後は床に平面においたり、吊り下げたりして印刷面を空気にさらして最低限48時間は乾燥させましょう。 インク量が多い場合などは72時間の乾燥が必要です。 プリンタの巻取り装置で巻き取ったまま長時間放置したり、丸めたままで、そのまま梱包して出荷したり、十分乾燥させないでラミネートしたりするとインクの溶剤が揮発しきれず塩ビフィルムの中に残り、内側から糊が劣化する危険が高まります。糊の劣化を防ぐため巻取機はできるだけ使用するのをやめましょう。

3)        塩ビのシートの素材には長期用、短期用、曲面用などさまざまな種類があります。 用途に応じて最適なメディアを選択しましょう。 短期用だけですべてに対応しようとすると事故につながる恐れがあります。

4)       コアに近い部分のフィルムの表面の光沢が落ちている場合があったり、同様にコアに近い部分で約30センチごとに横方向に筋が見える場合があります。 いずれもフィルム巻取り時にかかる圧力でフィルムの組成が変化したものですが、実用上の問題は無いため、不良品扱いとはなりません。

5)         糊の種類には大きく分けて溶剤系アクリル糊と水性アクリル糊があります。水性のものはエマルジョンタイプと呼ばれたり、ポリアクリル糊などと呼ばれることもあります。一般的に溶剤系糊使用のメディアの方がはがしても糊残りも少なく、多量のインクを使用しても問題がおきにくい高級品であるのに比べ、水性糊使用のメディアは価格が安いメリットはありますが、インクの使用量が多い場合は剥離、トンネル、縮み、糊残りなどの問題が出る場合があります。 インクを多量に使用する高濃度の印刷をする場合や、タイリングをして大面積に貼る場合は溶剤系糊使用のメディアの使用を強くお勧めします。

6)        ロールを保管する場合はできれば立てて保存するか、横にする場合は紙管キャップをつけてロールが直接床などに接地しないようにしてください。 ロールを直接床や棚に転がしておくと糊の劣化と印刷面への悪影響を招きます。保管環境温度もできれば摂氏20度前後のコンスタントな室温で50%の湿度が最適です。 摂氏25度以上、ないし摂氏10度以下で保存すると糊の劣化や離型紙の剥離、あるいは可塑剤の塩ビ表面への流出などの問題が発生する危険が高まります。

7)        印刷品質の良否はキャリブレーションとカラープロファイルでほぼ決まります。 インクがにじんだり、可塑剤の影響のように見える場合などは、ヒーター温度を上げたり、プリントモードを低速モード切り替えたり、双方向印刷を単方向印刷に切り替えるだけでよくなる場合があります。 特に低価格品の場合は塩ビのグレードも低いので使用には工夫が必要です。

とくに、ハーフトーンにムラが出易い場合は温度を上げたり、印刷方向を単方向にすることで直る場合があります。 また、ハーフトーンや色の濃いベタの部分が左右にあったりしてそこにムラが生じる場合も同様に温度やプリントモードを変更することで修正可能です。 印刷品位の良否は塩ビフィルムの品質と直接関係ない場合がかなりあるので、ご注意ください。

8)        ミスを防ぎ、時間とコストの無駄・リスクを避けるためには1グレード上の塩ビ製品をうまく使うことも一案です。 印刷スピードも上がり、品質も安定し、施工後の事故も少なくなります。

9)        アルミ複合版などを貼り合わせた大型ディスプレー上に塩ビシートを施工する場合は、アルミ複合版のつなぎ目で塩ビシートをかならずカットして、できれば巻き込んで施工してください。これを怠るとトンネルやひび割れ、ないし剥離の原因となります。

10)      ラミネートフィルムを貼る場合はできるだけメーカー指定の物を使うようにしましょう。 せっかくいい塩ビシートにプリントしてもラミネートフィルムの品質や使用した塩ビとの相性が悪いと縮み、トンネル、剥離、破断などの問題が起きる場合があります。 事故を防ぐためには、品質の良い、かつ相性の良いORAGUARDの使用を是非ともお勧めします。

11)       水貼りはできればしないほうが望ましいのですが、どうしても行う場合は必ず水が残らないようにきれいにスキージで掻きだしましょう。 透明フィルムの場合、水と糊が反応して白濁する場合がありますが、これは品質不良ではありません。やがては水分は蒸発し、白濁は消えます。ただ、納期を急ぐ場合などは白濁したままでの納品となる場合がありますので、施工が急がれる場合は、クレームにつながらないように白濁して問題の起きる場所の水貼りは避けましょう。

12)      冬季の室内の乾燥と静電気に注意しましょう。 最適湿度は50%です。 プリンタはアースをしっかりして置きましょう。さもないと静電気の影響で塩ビの表面張力が変化し、印刷斑が発生します。 逆に夏場に湿度が高過ぎるとトンネルができやすくなります。

13)      冬季、雪に埋もれるような場所では、特に春先雪解けの頃、糊が剥れやすくなります。できるだけ性能の良い糊の製品を使用しましょう。 とはいえ、このような状況は溶剤系糊にしても非常に厳しい状況ですので、剥れやすい場所なのだということをあらかじめご認識いただき、できるだけいい製品を使用しましょう。 

14)       バスや列車などの塗装面、あるいはシャッターや雨戸などの塗装面に貼るときは、あらかじめ貼る場所と糊の相性を確認してから貼りましょう。 塗装面の種類や状況によっては糊が反応して、糊残りや、グレー糊の残像が残る場合があります。

15)       再剥離糊といっても、下地が塩ビのマーキングフィルムや塩ビフィルムだったり、アクリルだったりする場合は強粘着になったり、糊が残ったりする場合があります。 いくら短期といっても、再剥離性は下地の種類によっては機能しませんので、ご注意ください。 

16)        塩ビシートの品質の良し悪しは単に印刷品質だけではなく、製品の均一性、長期使用時の安定性、施工のし易さ、などいくつもファクターがあります。 また、いいものには価格があるということをご理解いただき、逆に言えば安物には安い理由がなにかあるということで製品を選ぶ目を養ってください。 

17)     製品には品番および製造ロット番号が製品ラベルおよび離型紙の裏側に刻印されています。 製品を使用した場合には必ずロット番号を記録・保存してください。 万一製品に問題が発生しても品番・製造ロット番号の証明がされない限り品質保証はできません。

18)     万一材料に起因する不具合が生じた場合には材料のみ代替提供いたします。 出力費・施工代などのクレームには一切応じませんので、事前の確認を十分行ってください。 不良品と思われる見本をお送りいただく場合は必ず元払いで発送してください。 許可なく着払いで返送されたものは受け取りを拒否する場合があります。 

 

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(2009/9/29)